自己満足

ずっと昔、おそらく高校の頃読んだ詩が、もう一度読みたいのだけど、誰の詩なのか思い出せない。
「私が死んでも、ねえあなた」
ていう冒頭。あ、すげー暗い冒頭。


朝起きたら、昨日までとはうって変わって体調が良くて、世界はすばらしいと思った。朝の雨は春めいていて、肌にやさしい、花粉も少ない、うれしい。軽やかに家をでる。久しぶりに快調だー。今日はばりばり仕事をしよう!と思って午前中張り切りすぎた。もうだめ。眠い。だるい。全然だめだ私。
ここのところ、暗い話題ばかりだったが、うれしいこともいくつかあった。まず、ワコールのバーゲンで下着を買った。相変わらずウルトラガーリー。花柄ですよ、レースですよ。今回はおそろいのキャミソールのおまけつき。偶然みつけたから。フレアーパンツって、かわいーと思うけど、私のファッションではあまり出番がない。つーかあれを着る人のファッションってどんなんだろう?といつも思う。キュロット?あと、なくしたと思った4000円のパンツがでてきた。毛布の間から。ひさびさのお天気の日に干した毛布を取り込んだときに、まぎれてしまったんだね、きっと。4回連続でスクラッチくじの5等があたった。美少年とお買い物をしていたら、「弟さんは〜」と言われた。今までマネージャーかパトロンだと思われることが大半だった。バレンタインにあげたせんべいは美味しかったらしい(id:sumikko:20050215)。


今日は、ベーコンの「随想集」を借りてきた。これも廃刊になっている。ちょっと読みかけたけど、ううむ、先にヴァレリー読もうっと。と思って昼休み本を読んでいたら、先週新しく入ってきたすごくきれいなお姉さん(もとスチュワーデスだって!)のうちひとりが、泣きながらぱたぱたと走り去ってそのまま辞めてしまった。私は部署が違うのでなんのことかさっぱりなんだけど、どんな会社だここは。私が気になるのはその人の退職の理由よりその人のきれいさで、凡庸に美しかったのではっきり言って顔は全く覚えてないけれど、美人な人だったなあ、と思う程度には美人だった。普通にうらやましい。あの人は、あの美人を保つためにどんな努力をしてるんだろう?私にも努力して保てるくらいの美しさがあれば努力を惜しまない予定なんだけど、生憎持ち合わせてないんで努力のしようがないんだよねー。どんなにがんばっても、ほらみて私の成績表には「自己満足」のはんこがいっぱい。でもまあ、せめて「自己満足」くらいは、最高点をねらっておくか。

despair

大学に入って少したったころ、肉と魚を1ヶ月食べなかったことがある。たぶん読んだ本かなにかに影響を受けたんだろう。特に激しい決意じゃなくて、食べなかったらどうなるかなーと思って食べなかっただけ。当時は今ほど肉を欲していなくて、それは特に酷な一月ではなかった。居酒屋では冷や奴とか枝豆とか食べとけばいい。全体的に油分が不足して肌がかさついたけど、たぶんそれくらいだった。むしろ体が軽くなって良い感じだった。

単純な私はクッツェーの「動物のいのち」を読み、今日一日くらいは、肉を食べることについて考えてみよう、と思う。下腹部に鈍痛。食欲がないので、ランチはコーヒーだけ。ホフマンスタールを読む。このまま帰って眠りたいよー。そんな日に限って午後は焼肉屋の取材が入っている。一歩店に入っただけで、ただでさえ匂いに敏感になっている体に獣臭がまとわりつく。吐き気を堪えて取材をはじめる。羊肉を一年中食べていたらこんなにエネルギッシュで饒舌になるのかというほど空回りの情熱でしゃべりまくるおそらく30過ぎの男性の店長が、生後一年未満の羊肉の旨さについて、その香りや食感などを、実に事細かにありきたりな表現で、延々と語っている。「自慢のランチを食べてもらいたかったんだけど、もうランチタイム終わってるんだよね〜残念!!」となんとか侍を意識したようなそぶりを見せている。某ファーストフードの会長の著書から好みの箇所だけさまざまに引用して信念らしきものを訴えている。食べるとは、人を良くすると書くのだと、その徹底的にコスト削減された、簡素ともいえる店内で、私に教えてくれる。鞄の中で「動物のいのち」が震えている。その日は珍しく同行取材で、連れの女が店長に「もし5000円で食べ放題とかいうのがあったら絶対来ます!私!」と言っている。腹一杯食べて飲んで客単価3000円の店で、あとどれだけ食べようと言うんだこの女。私はそんな異世界で、必要なことだけを事務的に聞きだして、顔写真を撮らせてもらう。カメラを向けて「脱がなくてもいい?」と訊かれても、仕事用の笑顔ははりつけたまま。
ものすごく疲弊した。自分の仕事が心底嫌になるのは、こういう日だ。とりたてて失敗もないし、なにも悪くもないけれど、もうなにもかもが自分に合わない、あの嫌悪感。
携帯を見るとメールが入っていた。震えていたのは「動物のいのち」ではなく携帯だった。メールを見ると、既婚の友達からだった。「妊娠したみたい。でも今はまだ欲しくないからおろそうと思う」。絶句して、あまりのショックで、本当に、もう。


ヴァレリー・セレクション (上) (平凡社ライブラリー (528))

ヴァレリー・セレクション (上) (平凡社ライブラリー (528))

クラゲを巡る幻想

id:mashijun:20050310さんとこで拝見したハバネロ栽培キット。
http://www.shinofarm.jp/bussiness/02engei/index.html#topic5
あまりにも欲しくて、篠ファームさんに問い合わせたところ、

当社からの小売は、卸店にお任せしており、販売店のすべてを把握しておりません。ただ、大型店舗さまでは、ロフト様や、東急ハンズ様で取り扱っていただいていると聞いております。また、小をご希望の場合は、お急ぎでなければお近くのサークルKさまか、サンクスさまでご購入いただいく事もできます。サークルKさま、サンクスさま共に3月中旬ごろから販売をお願いできるそうです。(ただ、各店10個限定と聞いておりますので、確実に手に入れていただくには早めのご予約などをお願いいたします。)
本日はお問い合わせ、誠にありがとうございました。

というとても丁寧なお返事をいただきました。
サークルKかサンクスで買えるんだって!予約せねば!!

真空

今朝の東京はかすむほど春の風情で、花粉のための涙目が、しばしの別れを路地で惜しむような、果たして本当の記憶なのか空想なのか区別のつかない幸せな春の朝の景色を映し出す。開いた電車のドアから花粉とともに流れ込んできた、すらりとした白髪まじりの男性(おじいさんというほどじゃなく、中年でもない。なんていうのだろう、あのくらいの好ましい歳頃)は、たった今煎ったコーヒー豆を挽いたばかりというほどの、芳しい香りをいっぱいにまとっていて、私はそのざっくりとした生成の麻のジャケットの下の今なお私を充分に魅了するであろう肩に、おでこをつけたくなる。そして息を胸いっぱいに吸い込みたい。
しばらく眺めていてわかった。その男性はクッツェーに似ている。といっても私の知っているクッツェーは表紙の裏で哀しげにこちらを見るクッツェーだけなのだけど。昨日「エリザベス・コステロ」読了した。耐えきれなくなって「動物のいのち」も買ってしまう。ああ。今月は、すでに借金生活なのにな。カフカの短編集もきちんと読まなければ。「掟の門」。高校の頃読んだけど、よく分からずに読んでいた。それにしても、講談社文芸文庫には腹が立つ。ホフマンスタールの「チャンドス卿の手紙」が読みたいと思って検索したところ、岩波文庫講談社文芸文庫からでていた。まあ岩波文庫が廃刊になっているのはまあ仕方ないとして、どうして講談社文芸文庫も廃刊にするの。なんのためにあんなに高いの。カスタマーセンターに電話して、どうにかして手に入れる方法はないかと食いさがったが、「ございません」とさらりと言われた。恥を知れ!この憤りを伝える相手は一人しかいない。その不愉快な出来事をメールで伝えると、当然その人は、驚いてくれて、しかも私の切望するその本を持っていた。焦燥と、羨望と、確信でくらくらする。

私が最初に勤めた大企業の同僚が、転職して地方に行くことになった。社会人1年目にして丸の内にOL向けのマンションを買い、50歳を過ぎてもローンを支払い続けるはずだった。地方に行くのはおそらく2、3年。その間、マンションどうするの?と訊いたら親に返却かな、と。なんだー買ってもらったんかい。話は転がって、彼女が帰ってくるまでの間そのマンションを今の私のぼろアパートより格段に安く貸してくれるという。築3年。丸の内にある高層マンションの28階。42平米。私のぼろアパートは次の6月で契約が終わる。更新するかしないかは、まだ決めていない。夏は、ヨーロッパに旅することにしている。そんなに長く休めないから仕事は辞めるつもり。運良く次の仕事が決まればいいが、そう何事もうまくいくまい。いよいよ東京撤退かなーと漠然と思っていた。たいていの、楽しいことも辛いことも経験したしね。だけど、その友達の提案する程度の家賃なら、ほどほどに楽しい仕事をして家賃を払ってまだ少し、余裕のある生活が送れる。可能性のひとつ。


帰り道、切望していた本を借りた。苔みたいなハンバーガーショップで温かいウーロン茶を飲んで、少しだけおしゃべりをする。歩いて帰れる距離だけど、花粉だし体調もすぐれぬし、電車に乗って帰る。帰り道、いつものように丘をひとりでのぼる。梅の花が満開だ。たぶん今宵が盛りだろう。風もなく、穏やかな夜の公園は真空のよう。白やピンクの小さなぽんぽんが宙に浮かぶ。
充分だろう。ここにいる意味は。
このぼろアパートでなくては意味がない。
それに、鞄には本が入っている。意味なんて、いらないのかもしれない。

動物のいのち

動物のいのち



チャンドス卿の手紙・アンドレアス (講談社文芸文庫)

チャンドス卿の手紙・アンドレアス (講談社文芸文庫)

初公開!化粧ポーチ

今朝はエアコンから侵入してきた花粉によるくしゃみで目覚めた。せっかく早く起きたのだし、アイメイクに気合いを入れてみた。しかし、花粉症でしょぼしょぼの目に無理してアイシャドウを重ねても腫れぼったいだけ。アイラインもマスカラも、涙で流れてパンダになっちゃう。腐れ花粉。私はアイメイクが一番好きなのに。アイメイクこそメイクの醍醐味。喜び。恍惚。ああ、新しいマスカラが欲しい。
そんなおり、特に募集もしていなかったのだけど(失礼)、「sumikkoさんの化粧ポーチを見せてください」というリクエストメールをいただきました。ありがとうございます。取り急ぎやるべき仕事がないので(社長が行方不明)、今日の私の化粧ポーチの中身を確認してみたいと思います。
もちろん中身も外見もほぼランコム

日によってもちろん中身は変わりますが、今日はこちら!

うわ。大荷物ですね。
まず右の四角い黒い物体4つは左上から時計回りにファンデーション、チーク、ルースパウダー、アイシャドウです。かなり邪魔なんですが、どれも欠かすことのできないアイテムです。とくに25を超えたあたりからルースパウダーの威力を思い知った。化粧直しを何度もファンデでやると、肌がごそごそになるんですよねー。アイシャドウは今日はカラーフォーカスの4色セットキャトルオンブル201ですが、単色のカラーフォーカスを2、3個のこともあります。そして左はグロスが2個にリップ1本、アイブロウに白のアイライナーです。今日の頭の悪いところはグロスが2本ってとこですね。どっちか一本で良かった。ああ、でもどちらも捨てきれないんですよ。ピンクだと昼間は派手かなーと思う。でもアフターファイブは顔が疲れてくるからちょっと明るめの方がきれいだと思う。ま、楽しいアフターファイブがあればの話ね。白いアイライナーは目の下用です。夕方になると目が血走ってきて怖いので、白をいれるとちょっと明るくなります。それと保湿用の化粧水スプレー(これは大切!)。あぶらとりがみはよーじや。今日は、マスカラが入ってませんね。単純に入れ忘れです。でもマスカラ、ポーチの端からはみ出すんだよねー。ランコムで短いマスカラをコフレじゃなくて普通に売ってくれればいいんだけど・・・。こんな感じですね。
楽しかったですか?私は結構楽しかったです。

深度

デートをすっぽかされても、社長に「ごめん、今月の給料の支払い5日待ってくれない?」と言われても、恋人を親友に寝取られても、それほどまでには動じない、私は比較的安定した精神の持ち主だと思う。だけどPMSには完敗だ。今朝は通勤電車の中で私の背後のしつこくつり革を掴んでいた男性がようやくあきらめたつり革が振り子の原理で私のあたまにがこんとあたっただけで、たいそう侮辱されたような気がしてとても悲しくなった。そんなちっぽけだけど哀しい事故がさらに暗い予感をもたらす。たぶん私のつわりは重いと思う。そして難産だと思う。私の母は実際に重かったというし、私は帝王切開で生まれている。つわりのことを思うと、憂鬱になる。まあまだ出産の予定はないし、出産の予定が目の痛くなるほど真っ白な紙だということがさらに哀しい。とにかく、閉経を心待ちにしている。そして閉経までには子供を産みたい。Zzz・・・


クッツェーの「エリザベス・コステロ」。すごくおもしろい。久しぶりにどきどきしながら読んでいる。小説を読むときに私が気になっていたこと。ものすごいスリル。彼からいろいろ教えてもらった。ホフマンスタールマリアン・ムーア、ポール・ウェストなどなど。ヘレニズムとカソリシズムについて。ユリシーズは、やはりきちんと読もうと思った。間違いなく私の最も好きな作家の一人。惜しむべきは私の無知。数々の引用にするりと思い当たれば、さらに何十倍も深く、読み応えのある小説だろうに。


その人と、話さなくては私は、だめなのだ。久しぶりに聞いた声に、心底安堵した。いらだちのすべてが消えるような気がした。私の視点のすべてはその人で、その人がいなければ、何も見えない。考えらなれない。ぐるぐると一人でまわる思考を打ち明けようとして、閉じこめられたつたない言葉をつぶやけば、驚くほどの早さで理解して、海に還してくれる。つまりこういうのを恋というのだろう。些細なことなんてどうでもよくなる。それでも、絶望の原因が単なる嫉妬だと気づいて、驚いたりする。おかしなこと。恋の深度は歳を追う度に、回を重ねる度に、浅くなると思っていたのにな。

食べる姿

亜麻色の髪の乙女」を聴くと、あの人の多大なロマンチストぶりが遺憾なく発揮されたちょっとしつこくもある演奏を思い出す。きっとそんな「乙女」が理想だったんだろう。残念ながら私はそんなに優雅で崇高じゃないし、その人が結婚すると決めた女性も、ドビュッシーというよりどちらかというと、バルトークルーマニア舞曲って感じだと思う。まあ「理想」と「現実」は違う。でもそんな落差、私の知ったことじゃない。お幸せに。


あまりにも眠くて人生に支障をきたす。単なるPMSではないと思う。体に何かの卵が産み付けられて、それが私の睡眠を奪っているのだろう。寝ても寝ても寝てもまだまだまだまだ眠い。気分転換にPMSについてちょっと調べてみる。「生理2週間前から下腹部痛、肩こり、頭痛、便秘、胸のはりなどに加えて、イライラ、憂うつ、集中力減退などの精神的変化が起こる」らしい。つまり1ヶ月のうちまともなのは1週間だけ?聴かなかったことにしよう。


そんな午前11時半。鬱な私の携帯に、温泉帰りの美少年から電話が入る。「おなか空いた」。会社の近くのイタリアンレストランに半分眠りながら向かう。私は食欲がない。一方美少年は自分のパスタを美しく平らげ、さらに私のピザに手を伸ばす。非常に好ましい、そのすべての動き。人の食べる姿がこんなにも美しいなんて。たいていは醜いし、自分の食べる姿がいかに醜いかも知っているから、私はアルコールの力を借りずには人と食事をする気にならない。そして、その大量のエネルギーはいったいどこに消えていくのか、余分なものの一切ないスレンダーな体。不摂生にもかかわらず、肌は透き通るように美しい。私はよく食べる、痩せた男が好き。摂生とワークアウトによって造り上げられた肉体には興味ない。成り立ちとして太らない体。それは好みの問題で、童顔がいいとか、背の高い人が好きとか、そういったレベルの話。私の不調には気づかない。その人にとって私の体調なんて、興味の対象外だ。残りのピザ、みんなあげるというと、満面の笑み。「君も食べなよ」とか「いいの?」なんて台詞はあり得ない。そんな無意味な言葉の代わりに「逢いたかったよ」。心を打たれない26歳女はいないだろう。それでもそれは「逢いたい」以外のなにものでもなくて、彼は、空腹と「逢いたい」が満たされたから、今、とても満足なんだろう。たぶん。

いろいろとわかりたくてわからなくなって昼休み買った本。

ドゥルーズの哲学 (講談社現代新書)

ドゥルーズの哲学 (講談社現代新書)


襞―ライプニッツとバロック

襞―ライプニッツとバロック

わかるようになればいいなあ。