餞別

sumikko2005-03-26

ここのことろ結構仲良くしている、腰までのゆるいウェーブの小柄な彼女は、男のだめな部分をいつも一身に背負ってしまうという、不幸な人生を送っている。この一年間で私が「まあ友達としておもしろいかなと思って」紹介した、面白いけどセックスアピールの破片すらないいわゆるもてない男たちと、あれよあれよと寝てしまっては、捨てられて来た。まず私は、「あの奥手の恋愛下手そうな真面目そうな(いけてない)」男がすさまじい勢いで彼女をデートに誘いその日にラブホまで至った情熱が驚きだし、その次に、すごい勢いで彼女を落としたにもかかわらず、彼女が将来について話し始めると、途端に逃げ出して消えてしまったことが驚きだった。「あんなにいい人そうに見えたのにね」。結局、やれればそれで良かったってことね。不細工でモテなさそうだからと言って優しく誠実だとは限らない。結構それにだまされる女は多い。だからハンサムでお洒落でかっこいいからといって軽薄だとは限らない。容姿の善し悪しは誠実さや優しさとは関係ない。だから。私は、容姿の良い男の子が好きなんです。みかけが良ければ自分がラク。「彼ってかっこいいのに優しいの」「彼って誠実さにかけるけど、あんなにかっこいから仕方ないよね」。ほらね。て話しがずれたけど、もちろん、彼女にも問題があって、なんとなく大人しそうで年のわりに幼く見える。すごく弱そうに見える。「あなたのみっともない部分も私の弱い部分も全て受け入れあいたいの」。堕ちていく恋愛っていう表現が、ぴったりな気がする。自信喪失気味の男には彼女は女神に見えるだろう。普段はなかなか相手にされないタイプの男だしさ。そりゃもう夢中になって引っ張り込んで、やり遂げた途端自信をもつ。オレってもしかしたらそう悪くないんじゃん?なんて高慢。もてない男典型。そもそも人としては、映画や音楽や文学などに造詣が深く、おもしろい男。女なんてやっぱ面倒だなって気がついて、あっさり捨てる。だけど「友人を傷つけた」と私に責められるのを畏れているらしく、私の顔色を窺う。言い訳をしようとする。もてない男の話なんか、私には興味ないよ。勝手にして。問題なのは、その度に半狂乱になる彼女。深夜に鳴り出す私の携帯。憔悴の訴え。そして今日は、またまた私が紹介した 3人目の男とデートをしている。「ホテルに行かないように 11時半に電話して」。・・・もてない女の話にも、興味はないよ。でも、友情ってやつが・・・。


今日は12時30分に、かつての大会社の同僚の転職のお祝いをしようと新宿で待ち合わせていたのだが、目覚めたのが12時15分だった。慌ててシャワーを浴びて家を飛び出す。頭が割れるように痛い。目が腫れている。体にはセックスの後の倦怠感のようなものが残っているが、まて、昨日は絶対にやってない。朝6時まで飲んではいたが、そのまま静かに帰宅して倒れて眠り込んだのだ。そうか。アルコールを飲まないセックスなんて、もはや思い出せない。たいてい、かなりの量を夜更けまで、もしくは夜明けまで飲んでからだったので、私は、朝までハイテンションで飲み続けた身体的精神的疲労をセックスの後の倦怠感と誤解していたのかもしれない。なるほどー。もしかしたらセックスを避ける理由が一つ減ったかもしれないわ。でもわかんないよね。今度飲まずにやってみて、この倦怠感がなければ証明されるわけだ。でも、もはや飲まずにセックスすることはないだろうなー、この先一生。
昨日は合コンで、久しぶりに朝まで飲んだ。結構楽しい飲み会でかなり上機嫌だったのだけど、私はうっかり「恐竜好き」だと言ってしまい、確かに子供の頃恐竜が好きでいろいろと本を読んだり紙粘土で恐竜をつくってペイントしたりしていたのだが、別に今とくに恐竜が好きなワケじゃない。しかし昔取った杵柄ってやつで、プテラノドンとかトリケラトプスとかイクチオサウルスとか、何年も口にしていない単語がぺらぺら口から出てくる。折しも夕方電車の中で「大恐竜展」ポスターを見ており、絶対行きたいと強く主張してしまった。私は、あの恐竜好きの女ね、と彼らには記憶されてしまうわけ。く。不本意だわ。
人間やればできるもので、 13時 10分に新宿に着く。場所は?「南口のホテルの 19階にある日本料理店」。今日は晴れ。新宿は人混み。駆け足の私はホットペッパーを配るとうがらしの着ぐるみとぶつかり、よろめき足に痣をつくる。アスピリンのおかげで頭痛は消えたが体は重い。目の奥も痛い。エレベーターに乗り込むと一気に霞む新宿が広く大きく下に広がっていく。体に重力がかかり、私は大きな鳥に背中をつかまれ上空に連れ去られていくのじゃないかと思う。待ち合わせの日本料理店からは、東京が一望できて、それはそれは良い気分だった。しかし。特選花かご弁当4200円。 fuck。金持ち OLめ。皆同期で同い年だが、大企業の総合職で私の年収より200万は高い上、一人は親に買ってもらったマンションに住む独身、もう一人はダブルインカムの主婦。ノスタルジーな赤のニットに黒パンツ、ベージュのパンプスに白のスプリングコートなんか羽織っちゃって、化粧っ気もアクセサリーっ気もないが、鞄と財布は免税店で買ったヴィトン。4200円のランチが私にとってどれほど衝撃的かはわかるまい。まーしかし、お祝いだお祝い。考えてみれば、恋人と 4200円のランチを食べることはあり得ないし、 なにより私は彼女たちが大好きで、最初の会社で 3ヶ月間しか一緒に働かなかったけど、彼女らに出会えた。私はあの会社に入って良かったと思う。
見た目には美しいが、特に美味しくも不味くもない4200円の懐石ランチを食べて別れる。私はデパートのアクセサリー売り場をふらふらとする。今日はやけに幸せそうにアクセサリーを選ぶカップルが多い。死ぬまでに一度はペアリングといふものをやってみたいのだが、残念ながらその願いは叶いそうにない。こんな晴れた午後、ちょっと一緒にお買い物にでかけたり、公園にでかけたり、というのは、ものすごく容易に見えるが、私にとってはとても難しかった。ここにいる多くのカップルは、どのぐらいの努力を重ねてショッピングに来てるのかしら。その幸福をどれほど噛みしめてるのかしら。どこにいってもやたらカップルが多く、ばんばんぶつかってしまうので、ジュンク堂に寄ってさっさと帰ることにする。帰り道、ちょっと丘を歩いたら、淡い夕焼けに梅が本当に美しかった。丘を越えたところに住む人は、このところ生きてるか知らない。別の女の子と遊んでるんだが、眠っているんだか、考え事でもしてるんだか。
疲労が体に急に来る。想いが溢れないうちに、帰って眠ろう。この倦怠感が消えるまで。ずっとずっと眠ろう。