食べる姿

亜麻色の髪の乙女」を聴くと、あの人の多大なロマンチストぶりが遺憾なく発揮されたちょっとしつこくもある演奏を思い出す。きっとそんな「乙女」が理想だったんだろう。残念ながら私はそんなに優雅で崇高じゃないし、その人が結婚すると決めた女性も、ドビュッシーというよりどちらかというと、バルトークルーマニア舞曲って感じだと思う。まあ「理想」と「現実」は違う。でもそんな落差、私の知ったことじゃない。お幸せに。


あまりにも眠くて人生に支障をきたす。単なるPMSではないと思う。体に何かの卵が産み付けられて、それが私の睡眠を奪っているのだろう。寝ても寝ても寝てもまだまだまだまだ眠い。気分転換にPMSについてちょっと調べてみる。「生理2週間前から下腹部痛、肩こり、頭痛、便秘、胸のはりなどに加えて、イライラ、憂うつ、集中力減退などの精神的変化が起こる」らしい。つまり1ヶ月のうちまともなのは1週間だけ?聴かなかったことにしよう。


そんな午前11時半。鬱な私の携帯に、温泉帰りの美少年から電話が入る。「おなか空いた」。会社の近くのイタリアンレストランに半分眠りながら向かう。私は食欲がない。一方美少年は自分のパスタを美しく平らげ、さらに私のピザに手を伸ばす。非常に好ましい、そのすべての動き。人の食べる姿がこんなにも美しいなんて。たいていは醜いし、自分の食べる姿がいかに醜いかも知っているから、私はアルコールの力を借りずには人と食事をする気にならない。そして、その大量のエネルギーはいったいどこに消えていくのか、余分なものの一切ないスレンダーな体。不摂生にもかかわらず、肌は透き通るように美しい。私はよく食べる、痩せた男が好き。摂生とワークアウトによって造り上げられた肉体には興味ない。成り立ちとして太らない体。それは好みの問題で、童顔がいいとか、背の高い人が好きとか、そういったレベルの話。私の不調には気づかない。その人にとって私の体調なんて、興味の対象外だ。残りのピザ、みんなあげるというと、満面の笑み。「君も食べなよ」とか「いいの?」なんて台詞はあり得ない。そんな無意味な言葉の代わりに「逢いたかったよ」。心を打たれない26歳女はいないだろう。それでもそれは「逢いたい」以外のなにものでもなくて、彼は、空腹と「逢いたい」が満たされたから、今、とても満足なんだろう。たぶん。

いろいろとわかりたくてわからなくなって昼休み買った本。

ドゥルーズの哲学 (講談社現代新書)

ドゥルーズの哲学 (講談社現代新書)


襞―ライプニッツとバロック

襞―ライプニッツとバロック

わかるようになればいいなあ。