美。

今朝目覚めると、美人になりたいと思った。
いやいつだって美人になりたいとは思っているのだけど、テンションというものがあって、ぶっちゃけ無駄な努力とわかっていてもネイルの細部まで、まつげの角度にまでこだわる自分が愛しく楽しい時期もあれば、け、所詮そんなん無駄だろ？と、申し訳程度に眉と口紅だけ描いて本を読み耽っている時期もある。ま、爪になにかぬったりマスカラにこだわることが美人かと言われれば、もちろんそれは美人を形成するほんの一面でしかなくて、本当の美人は、そんな些細な努力をしなくても美人だ。くそなんなんだ本当の美人って。比較的寝起きの良い私だが、ここのところ朝がだるだるで、手抜きだった。今朝は、久しぶりに快調に目が覚めた。久しぶりに気合いをいれてメイクをしよう。コンシーラーでくすみを隠す。カラーコントロールで頬の赤みを消す。リキッドファンデとパウダーで肌を作り込み、4色のアイシャドーでニュアンスのある目元と2色のチークで立体感のある頬を演出する。ビューラーでカールさせた睫には、マスカラベースを塗って、その後ブラックのマスカラを丁寧につける。下睫には、雨に煙る藤の花のようなアンニュイなラベンダーのマスカラを塗る。色味を整えた唇には控えめなラメの入ったグロスを塗りましょう。30分かけて完成。完璧。今日は何もない。取材もデートも食事の予定も。ひたすらデスクに向かって原稿をまとめたり台割を組んだりするだけで、誰も私をみないだろう。それでも満足。今日はいつもよりは美人です私は。
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旅をする裸の眼