レクイエム

旅の終わりの国際線のシートではこの飛行機の墜落を願うし、毎朝ホームではなだれ込んでくる電車の線路に飛び下りることを想う、私は基本的に暗い人間なのだけど、気分にむらのあるほうじゃない。どちらかというといつも元気で、血圧は高めだと思われている(実際はふつうです。上が100で下が60くらい)。でも昨日は朝から不調で、フランソワのラヴェルなんて聴きながらぎゅうぎゅうの通勤電車に乗っていたらこのまま、押しつぶされてなくなればいいと思った。でも夕方5時をすぎたあたりから、肉、肉、肉と誰かが体の中でつぶやきはじめる。数ヶ月に一度訪れるこの欲求。25歳を過ぎたあたりから顕著になった。普段私はどちらかというとタンパク質は大豆で補う農耕民族で、さしたる肉好きじゃないんだが、どうしたわけか、ひとたびこの声が聞こえ始めるともうとまらない。早く。早く肉を!なんだこの欲求は。おそらくは死に行く卵子に捧げるレクイエム。もしくは26歳女の中でようやく目覚めた眠れる狩猟本能。7時を過ぎてとうとう我慢できなくなった。どうしよう。今日の肉的気分は子羊のローストでも小鳩のグリエでもフィレステーキでもない。もっと野性的なやつ。焼き肉だ。あー。焼き肉か。それなら男の子とはいけないな。私は男の子と二人で焼き肉には行かない。あまりに直接的で恥ずかしいもん。だから同じく肉を欲してそうな女の子3人に「肉祭」と題したメールを流す。30分後、恵比寿にニューオープンのホルモン焼き屋に四捨五入三十路女4人が会す。なんとオープン記念で2時間ドリンク飲み放題無料だった。わーいわーい。というわけで、まずは生ビールで乾杯。その後、ハラミ、生ビール、ホルモン5点盛り、生ビール、レバ刺し、生ビール、タン、生ビール、骨付きカルビ、生ビール、ツラミ、生ビール、ハチノス、生ビール・・・。ありとあらゆる動物の部位を食べ尽くす。これは食欲じゃない。肉欲。あ、違う意味になった。だけど、そうなんです。空腹は無関係。盛大に肉を食べることに意味がある。そしてこれだけ戦のように食べて一人1800円!?恐るべし飲み放題。本当に飲食業って水商売なのね。久々に心と体が満たされた。ものすごい充足感。こんなに満たされて、満たされたけど、あーあ。また一つの卵子を無駄に失う。
今聴いている音楽。

Palookaville [Limited Edition with Free Astralwerks Sampler]

Palookaville [Limited Edition with Free Astralwerks Sampler]

The Joker
うわぅ!かっこいー。
つづいてこれ。
College Dropout

College Dropout

そう私はやっぱりヒップホップ好き。あまりにのっちゃって仕事が進みません。ジャケットかわいい。