慣習

sumikko2005-02-21

今日も私は働き蟻のように丘を下り、いくつかのCDと本を借り、てくてくと丘を登る。

久しぶりにウィンドウショッピングというやつをやった。考えてみると、この一月、全く洋服や化粧品や靴やアクセサリーを買っていない。うわー。久しぶりにのぞいたランコムのカウンター。ああ。新しいリップが出てる。可愛いわ。可愛いわ。アニエスをのぞく。すっかり春めいたディスプレイ。アガットで新しいアクセサリーをみて、最後に辿り着いたのはゲランのカウンター。ああ。今年もチェリーブロッサムの時期なのね。私は香水さえひとつに絞れない優柔不断な女。だけど愛用している4種類の香水は6年前から変わることなくゲラン。ゲランの中で浮気をすることはあっても、他のメーカーに浮気をすることはない。中でもチェリーブロッサムは特別で、毎年春を感じた日から数日間、これをつけることにしている。ぼんやりしていると、その日の訪れをうっかり逃してしまう。ほら。こんなにうだうだしている場合じゃない、私。
だけど驚くほど心がはしゃがない。かつて、私の最も無邪気に幸せな場所はランコムのコスメカウンターだった。最も安堵する場所は国際線のシートの中だった。だけど色とりどりのコスメが並ぶランコムのカウンターに座る私の幸せは、もはや知り尽くした快感で、現実に貧窮している今、財政をさらに圧迫してまで得るほどの幸せじゃない。高価なスキンケア用品を使っても、本当に美人になれるわけでもなし。なーんてことは分かり切っていて、それでも少しでも美しくありたいと努力している自分が好きだと思えるうちはそこにいくら費やしても惜しくないけど、今は私の中で「現実には美しくなれない」派が優勢な時期なので、無理してバカ高いアイクリームなどを手に取ったりもしない。26年間生きてきて、もうたいていのことはやった気がする。なんて言ったら笑われるだろうが、でも、これ以上なにがあるのかしら、私の人生に。まあまだやってないことに結婚と出産というのがあって、結婚が無理ならせめて子供でも生もうか。じゃ、次はコンドームに針で穴でも空けちゃおうかと思ったけれど、私は子供が欲しいと思うくらいの相手とは結婚したいと願うスタンダードな女で、穴あきコンドームで関係をぶちこわすようなマネはまだできない。
ふわーあ。「終わりなき日常を生きろ」でも読むか。
でも、そうだわ。たぶんまだ、国際線のシートは私の最も安堵する場所。どこにもいけない、どこか一点にしか行けない国際線のシートなら、私はぐっすり、ぐっすり眠れる。この夏、それを確かめよう。それでも行きたい一点は、ひとつしかなくて、それが叶わないと悟ったら、そうだな。本格的に隠居でもするかな。