会津若松旅行

sumikko2005-01-10

どんなに回数を重ねても(というほどの経験はありませんが、ごめん見栄張った)セックスの後は必ず絶望的に哀しくなる。それはどうあがいても免れないのだから、少し前に私は好きな人以外とはセックスしないと決めた。この世知辛い世の中で、これ以上無駄に悲しまない方法として。どうやっても分かりあえないんだし、そもそも分かりあう必要もない。でも私はあなたの全てがわかりたい。もしもほんの少しでもあなたが私のことをわかりたいと思ってくれたらそれでいい。でもせめて。直後ぐらいは確信がほしい。それが異常にもろいものだとしても。それは約束じゃない。責任はない。でもルールだ。恋愛における数少ないルールの一つだ、と私は思う。往々にしてそのささやかな願いさえ無惨に砕け散り、やっぱり私はいつだって哀しい。それが好きな人ならばなおさら哀しい。哀しい。哀しい。


ちょっと会津若松に行ってきました。福島県は人生初。東京駅の出発は9時半と中途半端な時間で、旅行というのは異常に朝が早いか、もしくは非常にゆっくり出掛けるかでないと、妙な余裕ができてしまってよくないと思った。結局普段と同じ時間に起きるが、たらたらと過ごしていたら用意が間に合わず、会社に出掛けるのと同じような装いと持ち物で出掛ける。ま、一泊二日だしねー。東京駅を出発し、郡山でローカル線に乗り換える。3両の真っ赤な車両は座りきれない人が出るほど混雑していて驚き。郡山を出てからどんどん冬模様になる。窓には水滴がびっしりで外が全く見えないから、私は貸してもらった高野文子の「黄色い本ージャック・チボーという名の友人」を読む。最初、絵が苦手だなあと思ったけど、素晴らしいマンガでした。コマ割りとか描写とか本当に上手い。読みふけっているとあっという間に到着。会津若松は雪です。真っ白。つもる雪はさらさらの粉雪。後から後から降ってくる雪が、髪の毛やコートや鞄にふわふわとくっついて久しぶりに雪が楽しい。
まずは腹ごしらえをする。江戸時代創業の田楽の専門店「満田屋」に行く。土蔵の趣のある店構え。奥では食事もでき、ここで昼食とする。囲炉裏の炭火であぶった田楽セットは1050円。

こんにゃく、豆腐、餅、シンゴロウ、サトイモ、ニシンがそれぞれ違った味噌で楽しめる。香ばしくて、とても美味しい。昼間っから生酒を飲む。店を出ると雪はいよいよ強くなっていて、これは観光は無理だと、本日の宿である東山温泉に早くも向かおうと思うがバスは40分後。喫茶店に入りコーヒーなどを飲んで時間をつぶす。窓の外は雪が降ったり止んだり。北国だなー。閉じこめられた感じがなんとも官能的。外は異様に白いから、カメラばかりじゃなくて私の目までがホワイトバランスを崩す。世界が紫になる。
東山温泉は市内から15分ほどの所にある温泉郷で、特に情緒溢れるところでもないはずだが何しろ雪景色。なんてことない川でさえ張り出した枝にうっすらと雪がかぶって墨絵のようで、非常にロマンティック。宿泊の温泉宿だって20階建てのきらびやかな大温泉施設だが、部屋は広々、設備もきれいで、下品な団体用の温泉宿を想像していた私の予想を遙かに上回る。なにより部屋の大きな窓からは会津市内を一望できて、白い街が淡い夕陽に染まる瞬間はとても幻想的。

温泉はさらりとした湯で特に温泉の効能が感じられるようなものでもないにせよ広々としていてのんびりと浸かることができた。浴場に置いてある塩、炭、ぬか、茶などのフレーバー(?)のあるボディーマッサージクリームがとても気に入って、うきうきとマッサージしていたところ、翌朝やりすぎで肘がすりむけていたことに気づく。だからほどほどが大切なんだってば私。風船を持った子供が走り回り赤ちゃんの叫び声がこだまする絢爛豪華な宴会場で食べる夕食は予想通りつっこみどころ満載だったが、食後部屋にフルーツプレートのサービスがあり、パイナップル好きの私としては結構満足。普段ならまだ仕事をしている時間から、昼間市内で仕入れてきた期間限定、絞りたての新酒をコップで煽りながらごろごろする。至福だー。
はっと起きると8時過ぎ。ものすごくよく寝た。特にお腹も減ってないが喉も渇いたし一応和洋30種類のメニューが並ぶバイキングが待つ宴会場鳳翔の間に行く。イカソーメンにスクランブルエッグ、コーンスープに湯豆腐、ロールパン。いかにも大型温泉旅館という感じでよろしい。オレンジジュースをひたすら飲む。
午後からは喜多方へ。電車待ちの間やけに天井の低いサティに寄ったら食品売り場の野菜のコーナーに起きあがりこぼしが山のように売られている。

1ケ98円。家族の数より1つ多く買って神棚に供えておくのだそうな。こういうのはとってもおもしろい。スーパーって大好き。私は旅にでるとかならずスーパーをのぞくことにしている。
喜多方は蔵と酒とラーメンの街。ラーメン嫌いの私だが、はるばるここに来たならラーメンを食わずにはいられまい。とあるラーメン屋に入り、看板商品である味噌チャーシューを食べる。うわー。

チャーシューてんこ盛り。脂っこーい。麺はラーメン版きしめんみたいなちょっと太めの平面。超こってり。舌がだるくなる。連れの話だとこれは旨いらしいが、私は普段ラーメンを食べず、サンプルがないのでこれが美味しいのか不味いのかの判断がつかない。旨いか不味いかと言われたら、不味くはないけど、胃にはもたれる。つまり私はラーメンが嫌いなのだろうという結論に至る。私はラーメンが嫌い。
その後甲斐本家蔵座敷という醸造業などを営んでいた超豪商の甲斐家を見学したり、凍死しそうになったりして、時間をつぶす。駅前のレンガ作りのカフェで電車待ちをしていたところ、昨夜酔っぱらいながらメールした友達からの返答で、20歳の頃駅前のレンガのカフェで彼女とお茶を飲んだというメールを想い出し、ここかあと少し不思議に思う。6年前の彼とその彼女。ぐるりと見渡して、どこに座ったのかしら、と思う。
そんな感じで旅は終わりを迎える。郡山まで戻り、新幹線にのる。MAXやまびこ。どうせならMAXがいいと貧乏根性。さらに絶対2階がいい。田舎者丸出し。ビールを飲んで鯖寿司を食べて、なんだか26歳の女を演出。本当は私、くるみパンとグレープフルーツジュースとブルーベリーヨーグルトが食べたいんだよ。昼間ぼてぼてのラーメン食べたんだもの。でもそうね。ちょっと背伸びして、完璧な旅にしてみましょう。真っ暗な窓の外を眺めていると、大型スーパーとパチンコとラブホテルの明々とした看板が交互に現れて、世界はそれに尽きるような気がしてくる。「Take1」というラブホテルのネーミングに白々とした感動を覚えながら、何色が好き?という質問に答えようと努力してみる。1泊2日の旅はほぼ36時間。微妙な時間。旅というにはちょっと短い。昔、一人で各地を彷徨っていた頃、私は一生旅が続けられると思った。どこにも帰らなくていい。3週間の旅の終わり、体は疲弊していても家に帰るよりもこのまま旅を続けることをずっとずっと強く望んだ。本当に旅が好きだった。そのうち、うまく一人で旅ができなくなって、一人で旅にでるのはやめた。一人旅の人を見るのさえ怖い時期があった。所在ない旅人は見るに忍びない。それでも、今はまた一人でどこかに行きたいとも思う。好きな色や、26歳の女らしい食べ物や、無意識についてしまうため息について思い巡らす必要がなく、ただひたすら伝えたい相手に、今日見た素晴らしい景色について、美しい葡萄畑について、美味しいケーキについて、考えた事について手紙を書き続けて、その膨大な手紙のうちからたった一通だけを、一番言葉少ないハガキを投函するような、そんな旅。それでも、今この時間が、終わらないでとも思う。だけれども一刻も早く家に帰ることも夢見る。いつの間にか窓の外の雪は完璧に消えていて、すごい、日本は広いんだわ、としみじみと思う。