いつものように

sumikko2004-12-31

びゅーっと実家に帰ってきました。数年ぶりに羽田までは車で。東京は蒼く蒼く、いくつものトンネルを抜けて外にでるたびに目が眩む。スポーツカーの低い座席には深く体が沈んでスカートから露出する太ももの血管の青に驚く。太ももをさらすことなんて滅多にないものね。羽田空港は年の瀬らしい混みようで、ちょっと迷ってからお土産にマキシム・ド・パリのミルフィユを買う。私の一番好きなケーキ。

ラニホン行きの飛行機の出発ゲートはたいていはじっこにあり、コンコースをひたすら歩かねばならない。右足、左足、右足、左足・・・。気が遠くなる。単調な動きに飽きてリズムをつけてみる。結果的にスキップやツーステップになる。新しい歩き方を生み出すのは非常に難しい。飛行機は40分遅れで飛び立ち、きっかり40分遅れで到着する。雲ひとつない晴天の東京から雲に覆われた故郷に帰る。さすが山の陰。湖は銀色に輝いて、雲間から差し込む光の筋が美しい、幻想的。そばが食べたくて、帰り道そば屋によるがどこも売り切れ。本当にこっちの人は年の瀬によく、おそばを食べるのです。仕方ないから空腹にミルフィユ。でも美味しいわ。
夜は旧友たちと忘年会。懐かしい人々と楽しく喋る。飲む。飲む。飲む。そして歌う。
そして大晦日。目覚めると雪景色で、大晦日らしい風情が漂っている。買い出しに行く。そば。夜は牡蠣を食べるらしいので、年越しそばは昼食べることにする。スーパーには生そばのパックが積まれていて、こっちの人は本当にそばをよく食べるのだと感嘆する。割子というのはこの地方独特の食べ方なのだけど、プラスチックの三段の容器に入った割子そばもスーパーに並んでいてああ、故郷だーと思う。外は荒れ模様。午後から友人と喫茶店に行く。我が市で数少ない気の利いた喫茶店は異様に賑わっていて、みんな大掃除は?おせちの準備は?
ともあれ外は吹雪いてきてだんだん大晦日らしい風情。家に帰れば温かいごはん。ごちそう。広島の親戚から送ってもらった牡蠣を食べる。

うーまーいー。ボルドーの赤ワインとご当地ビール「鬼太郎ビール」を飲む。三十路を越えた姉と、実に15年ぶりくらいに「おむすび探偵団」というゲームをする。

そんな感じで時が過ぎる。窓の外が一瞬輝く。雷鳴が轟く。すごく近くだ。それでも不安は全くない。こんなに守られた世界。でも足りない。だからといって600キロを超えて自ら傷ついてまで満たされようとも思わない。
こたつに入って紅白を見ながらうとうととする。今年私が行った東西南北の端について思う。最北と最西はフランスのブルターニュのレンヌ、最東は北海道は知床のウトロ、最南は沖縄の宮古島の東平安名崎。来年はもうちょっと移動範囲の狭い一年になりそうだと思う。去年の大晦日も同じような気分でいたことを想い出す。そんなとき、思いがけず電話がかかってくる。そんなことが私を本当に安堵させる。満ち足りた気分にさせる。望むのは、たったひとつ。欲張りでもなんでもないです私は。きっと来年もこんな風であるかもしれない。それも、そんなに悪くないと思って一年を締めくくることにする。