むかし拾った潤朱の貝殻、どこに行っちゃったのかな

sumikko2004-07-21

昨日は、とある出版社に用事があったので、その後神楽坂を経由して帰ることにした。偶然、お祭りをやっていた。ほおずき市。浴衣姿のお姉さんとかいて音楽がぴゃらぴゃら流れていて出店がでていてとても楽しい光景だった。日に日に失速してくる転職活動で浮かない私の心がしばし華やいだ。小腹が空いたので当初はその辺のカフェでサンドイッチでも食べて帰ろうと思っていたのだけど、せっかく祭りだ。出店でなにか買って食べよう、と思ったがあんまり美味しそうなものがなかったので、「神楽坂五十番」という中華料理屋で肉まんを買い、ちょっと贅沢をしてキリンビールの「芳醇」を買って、太鼓を叩くお兄さんを見ながら蒸したての肉まんをはふはふと食べた。「芳醇」は美味しいけど歩き飲みをするにはちょっと濃い。歩き飲みには「ダイエット生」くらいがちょうどいいと思った。ほおずきの鉢植えが売られていて、おもわず買っちゃおうかと思った。毎年夏に赤い実がなったらどんなにすてきだろうかと思った。でも収入の不安定な私に扶養家族ができるのはまずい。たぶん履歴書の欄に扶養義務ありとか書くとさらに世知辛い世の中になってしまうだろうと思い泣く泣く諦める。せめてもの記念にと、屋台につるしてあった真っ赤なほおずきの写真を撮っていたら、お店のおばちゃんが「一個持っていけばいいじゃん」と言って赤く熟れたほおずきをひとつくれた。涙がでるくらい嬉しかった。とてもきれいな赤。透ける紅い袋に光沢のある珠の実が包まれていて、不思議な植物ね。とても愛らしい。袋に包まれていると確かに鬼灯って感じだけど、中の実は酸漿という名前がぴったりで、名付けた人のことをうっとりと想う。

いろいろな赤を見た。軒に立てかけられた傘の真朱や、前を行く女性の白地の浴衣に描かれた朝顔の蘇芳色。三日月の浮かぶ空は深緋。朱華色の小花とビーズをあしらった髪飾りをつけて駆けてくる小さな女の子が、たぶんねだってつけてもらったであろう口紅はまるで摘まれる前の苺みたいにつやつやだった。ビール1本の酔いは一番気怠くて、ちょっとこの世界が崩れてしまうと思った。早く帰りたいと思ったし、ずっと帰りたくないとも思った。