sumikko2004-06-24

キリンジの「Singles Best -Archives-」を買った。未発表曲の「さよならデイジーチェイン」良かったです。でもやっぱりDVDは別にいらなかったな。未発表曲とかリミックスとかの方が聴きたいと思いました。
そして昨日の夜は遅ればせながら村上春樹の「ポートレイト・イン・ジャズ」ISBN:4101001537読んだ。久しぶりに春樹を読んだのですが、やっぱりすごいなあと思いました。好きな男の子が夢中になってるものって知りたいと思うけど、そんなのに似た感覚になった。いや違うな。とてもあなたなんかにおよびもしないけどちょっとあなたの世界を垣間見たいわ、と思う。でも次に会っても「こないだ教えてもらったあれ、すごく良かった」なんてこと村上春樹には言わない。言わなくても村上春樹には私が十分に春樹の影響を受けたことは分かっているし、所詮、村上春樹には私が影響を受けようが受けまいが、関係ない。関係ないのだけど、そういう事実があるんだと村上春樹は一人納得しながら、ちょっと離れたカウンターで冷たいビールを飲んでいるような気がする。そろそろやめますね。
ところで、私が今までで一番回数を多く聴いたオフィシャルのジャズアルバムはBill EvansJim Hallの「Undercurrent」。友達にダビングしてもらったのだけど、ものすごく気に入った。くらくらするぐらい好きになった。それはすばらしく美しい音楽で、私が説明してもしょうがないんでぜひ聴いてみてください。そしてジャズをちょっとでも聴く人には信じられない話だが、なんと私はこのアルバムのジャケットを今まで知らなかった。友達のくれたものしか見ていなかったから。昨日タワレコで初めて目にして、凍りついた。たぶん37分くらい手に取ったまま見つめていた。水面に浮かぶ女性。何かでこのアルバムの「ジャケットの美しさも秀逸」と読んだことがあったが、別にそのときに見てみようと思わなかった自分が信じられない。とにかく、美しくて、ちょっと泣いてしまうくらいだった。
これと似たような経験がある。ルーブル美術館でのこと。Paul Delarocheという画家の「La jeune martyre」という絵の前で背骨を打ち砕かれた、と思った。特に有名な絵でもないと思う。暗闇の中で女の人が、たぶん自分の髪の毛に手を縛られ水面に浮いている。バックには魔神らしき人(?)の影。瞼を閉じる女性の顔の上にははかない天使の環みたいなものが。そこでもかなりの時間立ち止まっていた。
分析するに、私は水に浮く女の人が好きなのです。だから「めぐりあう時間たち」の冒頭でニコール・キッドマンが川に流されていくシーンにもものすごくエキサイトした。後にDVDも借りてきたが、ニコールが川を流れるシーンと、ジュリアン・ムーアがホテルのベッドで水没するシーンだけ見て返した。と、ここまで書いて思い出したのだが、そういえば、幼い頃私は、県立プールや学校のプールで体中の力を抜いて水死体のように水面を漂っては監視員に棒で引っ張り上げられたりしていた。そうか。昔から水に漂うのが好きだったのね。大人になって容易には水面を漂えなくなりその欲求が絵や画像で満たされるのかしら。
そして、あれほど気に入ったのに昨日は「Undercurrent」を買わなかった。いつか買うかもしれないけど、今は必要ない気がした、なんとなく。