動物とのふれあい

道北出張最終日。今日は動物とのふれあいを楽しんだ。
まず、稚内から西へ向かい、ノシャップ岬へ。夕陽の名所というが、今朝は晴れ渡り、念願(というほどでもないが)の利尻富士の頂がくっきり。振り返れば、楽しげに踊るイルカのモニュメントと日本で2番目に高い稚内灯台(42.7m、ちなみに1位は島根県の日御碕灯台)がある。

その後日本海沿いに南下。坂の下からサロベツ原野にいたる日本海沿いの道道稚内手塩線は、利尻富士と美しい海岸線を望む爽快なドライブルート。軽自動車のレンタカーの車体のあちこちが小さな不満っぽい音をたてるので、メーターを見ると110km。あらら、ごめんね。
そんな感じでご機嫌なドライブを楽しんでいると、あっという間に抜海港に到着。目的は野生のアザラシを見るためだ。といっても観光案内所で手に入れたパンフレットにちょろりと書いてあっただけなので、たいして期待していなかった。人気のない抜海港に入る。しばらく海を目指して進む。すると電柱にさりげなく据えられたアザラシの小さな写真を発見。その下には“←”との指示がある。大人しく従う。その指示通りに角を曲がること3度、やがて砂利の駐車場に建てられた「アザラシ観察所」という掘建て小屋に辿り着く。いぶかしがりながら小屋の扉を開けると、髭面の気さくなおじさんと化粧っけのない素朴で明るいお姉さん(好意的に言う)が笑顔で迎えてくれる。「アザラシ、いますか?」と訊くと、「そこにたくさんいるよ」と言う。指の先には岸壁から20mほどに位置するテトラポット。初心者には灰色のテトラポットしか見えない。そこで双眼鏡をかしてもらうと、いるいる!10匹くらいがテトラポットとその周辺でだらしなく寝そべっている。色は灰色でほとんどテトラポットと同化。わあ、かわいい!とはあまり思わないけど(寝そべってる姿はヒルみたいだし、水面から顔だけ出してるとモグラみたいなんだもん)、へえ、マジでいるんだ、くらいは思う。
驚いたのはここのアザラシについてはまだほとんど研究がなされていないこと。タマちゃんブームでようやく注目されはじめ、これから少しずつ研究が進んでいくといいなあ、ということだった。まだまだ、日本にも未知のことがたくさんあるんですね、当然だけど。

その後空港へ向かう。少し時間があったので途中の大沼バードハウスに寄り道。
大沼バードハウスの看板を目印に右折すると、一面の白銀世界をまっすぐに貫く道路の突き当たりには色彩を欠いて輝く湖とログハウスがある。おそらくあれが、バードハウス。ここもまだ白鳥は飛来していないんじゃないか、と半信半疑で訪れたのだが、駐車場で車を止めドアを開けたとたん、「ぐえっ、ぐえっ」という鳥の鳴き声に包まれる。ああ、いらっしゃっているのね。
雪を踏み締め、ログハウスをまわって湖のほとりにでると、辺り一面、白鳥とカモの群。こんなに間近で見たのは初めて。私の腰ほどある白鳥が陸でゆったりとくつろいでいらっしゃる。一応カメラにおさめてやろうかい、と思い近付くと、どっこいしょと言った感じで腰をあげ数歩遠ざかる。一応一定の距離を置くことにしているようだ(が、その後私がもの思いにふけりながら歩いていたら休んでいた白鳥と思いっきりぶつかってしまい、お互いとてもびっくりした)。ただで写真を撮らせてもらうのもなんだな、と思い、えさのパンを買う。コッペパンを手にしてログハウスのドアをでたとたん、先ほどのよそよそしさとは一転して打ち解けたムードに。私の足に乗り、手を噛み、愛らしいダミ声でえさをねだる。ううむ。白鳥は、湖に浮いている時が一番すてきだわ。

その後白鳥の熱烈なアタックに恐れをなしログハウスに逃げ帰り、大沼バードハウスのパンフレットを読む。驚いたことに、この大沼、数年前には一羽の白鳥も飛来しなかったそうだ。ある日、沼の近くに住む漁師の吉田さんが白鳥を呼び寄せる決意をし、冬の氷割りや、鳴き声やおとりのダミー、白鳥の凧を飛ばすなどさまざまな苦労をかさねて、白鳥の飛来地として定着することに成功したそうだ。そして今では毎年数千羽の白鳥が飛来するまでになった。

有益か否かはよくわからないが、すごいよな。

そんなこんなで、稚内、利尻、礼文出張はとても楽しい出張でした。

仕事の話は書きませんが、ちゃんとお仕事もしていますよ。

思うんだけど、南の島の一人旅より、厳寒の北の島への一人旅の方がずっと孤独じゃないです。南の島はなんとなく開放的になって、夜はどこからともなく三線(沖縄の三味線みたいな楽器)の音が聞こえたりして、つられて外に出て、浜辺で同じく散歩してる人に出会って、小さな島だから昼間もどっかで通り過ぎててお互いにちょっと覚えていて、なんとなく話が始まったりして、部屋に帰るきっかけを失って、やれやれ、めんどくさいな、でもちょっと楽しいな、みたいな気持ちが入り交じり、どちらにせよ部屋に帰ってからどっと疲れてちょっと寂しくなって親しい人に電話しようかと思っても携帯が圏外だったりして、ほんの少し疎外感を抱いたりするのだけど、厳寒の北の島は6時以降は部屋から出る気も起こらない。暖房の効いた部屋で、早々とお布団に寝っころがって普段はみないバラエティとか見たり、本を読んだりしてるうちにすぐに寝てしまう。翌朝は霜に輝く清々しい朝。睡眠時間も充分だから朝から元気。
でもまあ1週間誰ともろくに喋らないと(ビジネスユースは抜きにして)、このように長い日記を書きたい気分にはなるようです。