あなたが私の死を知る日はいつだろう

sumikko2004-11-28

男の人が語尾に「〜なのな」とつけるのは好きです。お兄ちゃんのような感じがして。ちょっとほんわりした気分になります。これは女の子が使えない素朴で柔らかな語尾。なのな。
昨日はまずは初台の住宅街にある「ラ・カスケット」というフレンチレストランでランチ。1890円で全力投球のフレンチです。プリフィクスなんですが、一皿のボリュームがすごい。朝を抜いていたんでかろうじて食べられましたが、ほんとおなか一杯。パンも美味しかった。バターだけではなく、豚のリエットが付いてくるのも嬉しい。お通しでオリーブもついている。前菜はホタテとキノコのマリネ、メインに雛鳥のロースト、デザートにココナッツのブランマンジェとマンゴーのアイスクリームをいただきました。ちょっと塩辛いなーと思ったのですが(お塩にこだわっているようですね。テーブルにもクリスタルソルトが二種類。でもこれ以上塩気はいらん)まあこのくらいがつんとした味じゃないと、というシェフの意気込みが伝わってくるのでこれはこれでよしとします。シェフは真面目一直線って感じ。フロアの感じもとても良いので、今度はぜひディナーでも伺ってみたい。天気はとても良くて、今日のランチのお相手の中目黒の女王は昼間でも相変わらずきれいで、夜も昼も美しいというのはすごいなあと思う。もうすぐ結婚を控える。薬指の婚約指輪がきらきらとして、とてもきれい。その輝きはあまりに強くて、私どころか彼女自身も少し目を背けたがっているように感じる。でもそれはそこにある。そこに輝いている。
その後都庁へ。展望台に行く。久しぶりだ展望台。昔はよく来た。落ち込んだときに高いところに行けば元気になるというしごく平凡な少女だった。しかし最近は落ち込んだとき、新宿駅からここまで来る元気すらない。一刻も早く家に帰って眠りたい。ラーメンズのビデオでも観ながら。ともあれ都庁には韓国人が多くてびっくり。都庁前で韓国人の女の子二人連れに「原宿へは歩いて何分か?」と旅の指さし日本語帳をひらいて尋ねられるが、生憎彼女たちは日本語も英語もわからない。私は韓国語がわからない。ものすごい欠陥のある本だということに気が付く。いいっぱなし。とりあえず原宿に歩いていくのはちと遠いんで新宿駅まで行けということだけなんとか伝える。
夕方、全日空ホテルに行く。リニューアルしてからは初めて。全体的に高級感がでてとても良いホテルになっていました。目指すは3階のシャンパンバー。少し約束より早かったので、先に入ってグラスシャンパンを頼む。黄金の液体。小さな気泡がグラスの底から立ち上る。なんて美しい。口で弾ける液体を楽しみながらロビーを見下ろすと、大きなクリスマスツリーの下では私よりも少し上らしき夫婦とその父親と思われるおじいさん(といっても私の父より年下かも)がベビーカーを挟んでカメラに向かっている。カメラを構えるのは私よりも年下に見える女の子。カメラマンは交代し、次は夫らしき人がカメラを受け取り、構える。ぼんやりとその様子を眺めながら、私の人生には今までもおそらく今後も、ホテルのクリスマスツリーの下で写真を取り合うことは一生ないだろうと思う。それはそこまで哀しくはないが、少し哀しい。今日は骨盤のずれなんて気にせず、足を組む。帰って骨盤戻し体操をすればいい話。読んでいるのは「母の眠り」。思わず泣きそうになるが、気合いを入れてつけたブルーのマスカラを思い出し涙をとどめる。やがて連れが現れる。彼女の姓が変わってから初めて会う。相変わらず色白のもち肌。以前より少しふっくらしているように思う。襟の間から、首のまわりにうっすらついた幸せの膜とも呼べる脂肪の下の鎖骨の動きを思う。彼女との付き合いはもう4年になる。その間に彼女は結婚し、私は出会い別れた。同じ歳。短期間ではあるが同じ会社で働いた。同じ女。なのにこんなにもお互いの人生が違うごく当然の事実に私は、驚く。どこでどうすれば、結婚をしてヴィトンの鞄とキーホルダーを持ち、年に4回海外旅行に行きクリスマスをオークラホテルで過ごす女になったのだろう。だけど、それは私の望みでないことも知っている。とにかく私は、彼女の乾いた言動が、雰囲気がとても好き。彼女のような男気に満ちた男はそういない。言葉があとからあとから溢れ出てきて、久しぶりに私は、なんのためらいも悩みも不安もなく、心から楽しく飲む。シャンパンを煽る。すっかりシャンパンで酔う。その後タクシーで渋谷へ。2軒目のバーに行く。それは美味しいブランデーを飲む。私の一ヶ月のうちで唯一楽しい3日間は2日間で終わることとなる。しかも予想額をかなり上回って。それでも夜の渋谷はひさしぶりに輝いて、タクシーでメーターがかたんかたんと音を立てることすらも私の小さな期待を満たす。
そんな感じですっかり酔っぱらった。本気で酔っぱらった。どうやって帰ったか覚えてない。目覚めると4時で私は部屋でコートを着たまま倒れていた。吐き気はない。ただ恐ろしい頭痛。シャワーを浴びて、再び眠る。覚えているのは、渋谷駅のホームで、意外な人からの着信が入っていたことに気づいたこと。意味不明な留守電も入っていた。私は、酔った頭で、たぶん少し大切だった人が、死んでしまったのだろうと思った。それを私に伝える電話だろうと思った。無性に不安になって、そのたぶん死んでしまった人に電話をかけたが繋がらなかった。たぶん、死んでしまったのだろうと思う。

母の眠り

母の眠り