3500年の月日に比べたら

sumikko2004-08-31

台風一過。本日はちょっと遠出をしました。三瓶山という実家から70キロくらい離れた山に埋没林を見に行くことにする。埋没林とはその名のごとく地中に埋もれてしまった巨木のこと。約3500年前(縄文時代後期)の三瓶火山の噴火で山麓を流れた土砂によって地中に埋もれてしまったたくさんの巨木が、ダムを建設する際に発見されたのです。それを展示棟にして見せてくれるのが三瓶小豆原埋没林公園。古代のロマンに出会いに行くのだ。楽しみだ。でもまずは腹ごしらえ。なんと言ってもこの地域で味わうべきは蕎麦。名店は数あれど、本日はせっかく遠出するし通り道だし、「羽根屋」という蕎麦屋に行く。「献上そば」という肩書きがあり、その由来は明治45年5月27日、大正天皇がまだ東宮の御時、この地方に行啓されこの蕎麦を差し上げたところ田園の香りをうつしたその風味がことのほか御意に召し、それ以来この蕎麦に「献上そば」の名をお許しになったとか。まあそれはどうでもいいんだけど、この店は「文化伝承館」なる、ばかでかい館の一角にひっそりとたたずんでいて、この伝承館の入場は無料なのだけど、入り口のところに見るからに食欲減退のファミレス風のけばけばしい蕎麦屋があって、目立つのでみんなそっちに行ってしまうみたい。そんな愚かなことはせず、伝承館の中をてくてくと横切り羽根屋の暖簾をくぐると客は我々だけ。きれいに手入れされた庭を見ながらゆっくりと食べられので私はお気に入りなのだけどなあ。もちろん、蕎麦の味もすばらしいですよ。割子蕎麦というのはこっちの独特の食べ方なのですが(私は東京でざる蕎麦に戸惑ったよ)、大体は赤い漆塗りの器に盛られて蕎麦が出てきます。ふつう3枚がセットになっていて、ここは630円。追加もできて1枚210円。よく食べる男の人だと5枚から10枚食べるそう(10枚はさすがに驚きだけど)。今日はちょっと奮発して(というわけでもないけど)山菜割子をいただきます。
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出雲蕎麦は、あの蕎麦の香ばしい風味を徹底的に味わいたいので、結果的に私は何も入っていないシンプルな割子が好きでしたが、これもおいしかったです。あ、むちゃくちゃ蕎麦モードにスイッチが入った。明日は市内の蕎麦屋に行こうかな。やっぱし東京でこれを食べてもイマイチです。この空気で、この時間の流れの中で食べなくちゃあ。そんな感じで店を出て、ひたすらドライブ。埋没林につく。客はやっぱり我々だけ。当然ですかね。夏休みは今日でおしまい。子供たちは宿題に追われてるはず(でも最近は夏休みの宿題って少ないらしいですね)。埋没林、予想以上に感動しました。直径30mのドームに入ると、地下約15メートルの広々とした空間が広がっていて巨大な埋没林が展示されている。階段で下まで下っていけるのだけど、すごい。
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一番大きな木は12.5mもあるのだけど、なぜか上が水平にカットされている。これは昔発見した人が有用材として切り出して使ってしまったからだそう。たぶんどっかの家でちゃぶ台とかになってるんだろう。それにしてもすごいねー。3500年前の大木が埋もれたということは、この大木はさらに数百年前、あるいは数千年前に生まれたもの。なかなか感慨深いです。外には古代ハスの池とか埋没林の根とかあってちょっとだけ楽しめた。その後、湖沿いにある「ルイス・C・ティファニー庭園美術館」へ。ここは装飾美術の巨匠、ルイス・カムフォート・ティファニーの美術品が約200点収蔵されている美術館。とても美しい美術館です。
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約9300平方メートルのイングリッシュガーデンも見事。湖を背景にうまく設計されている。初めて訪れたのだけどとても良かった。併設のベーカリー&カフェも雰囲気が良いのでゆっくりとお茶を楽しむ。しかし閉園が5時半とむちゃくちゃ早いので、早々に追い出される。
どこか外で夕ご飯を食べようかと思ったのだけど、今日は自宅でゆっくりと過ごすことにする。帰りにスーパーに寄ると生サンマがあったので買ってきて焼く。おろし大根とレモン。あー、旨い。ビールが美味しい。窓を開けると夜風がとても気持ちよくて、ああ、秋だねえ。足の伸ばせるお風呂にゆっくり入りながら本を読む。今日買ってきたクッツェーの「恥辱」。昔読んだのだけど、再読。おもしろいです。昔読んだときに何を思ったのかよく覚えていない。おもしろかったことは覚えているのだけど。大方何をしても何も考えずにやり過ごしてしまうのだろうな。それでもおもしろかったという事実くらいは、覚えているのです、強く。