道東2日目。寒い。寒いです。
今朝は顔が真っ赤になっていた。昨日のパックでかぶれたらしい。敏感肌だということを忘れていた。美しくなろうと思ったのに。
まずは釧路近郊でお仕事。その後レンタカーで厚岸に向かいます。延々と国道44号線を走る。単調な道。一人で運転していると25分に一回くらい奇声を発します。歌のワンフレーズとか弁解とか。そんなことをしているうちに厚岸に到着。いくつか取材と撮影。その後、お昼ご飯です。店はもう決めていた。3年前に私の初仕事で取材に訪れた「桜亭」という和食処です。写真の店主おすすめのカキコースは1500円。とってもリーズナブルでしょ?取材で訪れてプライベートでも行きたいという店は滅多にないのだけど、ここは例外のひとつ。カキフライ、カキ汁、柳川、カキ酢、握り。厚岸のカキを堪能。厚岸のカキは、弾力があって密度が濃いと思う。食べ慣れている広島産は繊細で瑞々しい。生か殻ごとちょっと火を通して、レモンをきゅっと絞ってつるりと食べるのがいちばん。フライなどにするのはちょっともったいない気がする。でも厚岸のカキは濃厚でどっしり。揚げても蒸しても焼いてもなお存在感を主張する。桜亭ではどれも結構しっかり味がついているのだけど、カキの風味はそこなわない。そしてそれぞれ異なる味わいなのでカキづくしでも飽きることがない(私は非常に飽きっぽいの。ラーメンも半分くらいでだるくなる)。
すっかり満足した私は、普通は正体を明かさないのだけど、3年前と変わらぬご主人の姿についつい「実は昔取材に来て、次は絶対にプライベートでいただきたいと思っていたのです」と打ち明ける。ご主人も喜んでくれて、茶碗のお土産をくれる。
釧路に戻る経路は退屈な44号線からそれて太平洋シーサイドラインという海沿いの道を行くことにする。ちょっと遠回りだけど。どうしても確かめたい村もあった。昆布森という村。昆布森?村の名前?スーパーマリオの海中シーンみたいなのを想像する。昆布森市街地3キロという標識に胸が高鳴る。山を超えて坂を下ると昆布森の街並が現れる。予想したほど小さくない。昆布森中学校と昆布森小学校まである。昆布森橋もある。昆布森小学校の校庭では生徒が体育の授業を繰り広げていた。昆布森。いいな。昆布森出身とかって。
そして釧路に戻る。戻る道すがら、考える。いつも考える。ものすごく、凡庸な疑問。旅をするということ。仮にも(いや仮じゃないな)私は、旅の情報を提供するエキスパートでなくてはならないわけだけど、でもみんな、何を求めているのかな。私もずっと旅を続けてきたけど、でも、何をした?私は、いつも移動してるだけです。点から点へ。その間、いろいろと考える。思い出す。次の点にたどり着けば、次の点に移動する事を考える。たぶん私にとってもはその移動こそが大切で、あとは中継地点にすぎないのじゃないかな、と思う。それと、ガイドブックにならないこと。今日私が一番楽しかったのは昆布森。もちろんガイドブックの記事にはならない。普通の村ですもん。たぶん民宿が一軒あるかないかの。そして多くの人にとってもきっと、ガイドブックにならないことが、大切でしょう?どの店が美味しいとか、どんな博物館があるとか、どんな岬があるとか、実はどうでもいいですよね。さて。虚しい。でもガイドブックだ。どうでもいい情報だけど、どうでもよくもない。誰かが大切な事を発見するベースとならなければならないはず。できるだけ公平に中立に。私は旅作家ではなく、単なる情報提供者。でも、つまらない本にはしたくないわ。
移動していると、軸がずれてくるのです。何が楽しくて、何が良いのかわからなくなってくるのです。