香る花

ただでさえ忙しいこの時期、明日からの急な出張のため先週から目の廻る忙しさだった。毎晩終電間際だった。本当に一刻も早く出張にでて逃れたいと思った。今日はなんとか仕事を切り上げ、ちょっとだけほっとして帰宅。
駅から自宅までの夜道、強烈な花の香りに襲われた。空腹と疲労も重なってくらくらした。正体は確かめなくてもわかる。ジャスミンね。白い花を鈴なりにつける。あんなに小さく可憐な花なのに、強烈な香りを放つ。子供の頃、実家の庭に勝手にジャスミンの苗を植えた。名前も花も愛らしいと思って。長袖のTシャツ一枚でも寒くなくなったある夜、庭にでるとそのむせるほどの香りに包まれた。まさかあのジャスミンの香りだと思わなくて最初だれかが香水の瓶を割ったのだと思った。やがてジャスミンだと気がついて、私は、虫でなくても受粉を手伝ってあげたいと思った。母はトイレみたいって嫌っていたけど、私はそのあまりに狙い過ぎみたいな香りにかえって潔ささえ感じたのだよ。
なんて思い出しながら、帰宅しシャワーを浴び、今から出張の準備をしなくてはならないのだけどあろうことか私は、スロージンフィズなんて飲み始めてしまった。
この春の夜にぴったりね。
明日からはまた冬に逆戻り。もう寒さを体が忘れた。きっと明日は寒いという不平のはてなダイアリーになると思う。そして、致命的な忘れ物を嘆く日記。完全に致命的な忘れ物じゃなければいいな、と思う。