but enough for today

一日の終わりは、グレン・グールド演奏の、バッハ「平均律クラヴィーア曲集第1巻~前奏曲第1番ハ長調」。
ニュートラルな気分のときに聴きたい曲です。
この曲は、春の細やかな雨の日の午後3時を思い出させます。
水滴にしなる雑草を裸足で踏みわけて彷徨って、だんだん洋服が水を含んで重くなり、体が冷えて感覚が麻痺していって、気がつくと、鋭利な草で無数に足にできた小さな切り傷からうっすらと血がにじみ出てくる様子を、ぼんやりと見つめた少女時代を思い出します。
その後、集合住宅の屋上に上って、灰色の空を見上げながら、ボイラーの排気孔で冷えきった体を暖めました。
子供のころはしょっちゅう風邪をひいて学校を休んでは、体が弱いことになっていましたが、
たぶんただ単に雨に濡れることが好きだったせいです。